2025年11月1日に国立競技場で行われたルヴァン杯ファイナル。柏レイソルはサンフレッチェ広島に1−3で敗れ、今大会を準優勝で終えた。このことについて今の気持ちを記録に残したい。
まったく及ばなかった

完敗だったというのが強く残っている。
2023年の天皇杯決勝、川崎フロンターレ戦の方が悔しかったと2つの決勝を比べてしまった。あの時はリーグ戦17位とボロボロだったレイソルが、苦手フロンターレといい勝負をして、PK戦でもこれを決めれば優勝というチャンスが2回ありながらも負けた。あの時は悔しかった。
でも今回は違う。勝てそうなんてならなかった。それくらい広島が強かった。
ロングスローに負けた

レイソルの3失点はすべてセットプレーだった。1点目は広島の右サイドから放り込まれたロングスローに頭で合わせられた。2点目は素晴らしいフリーキックを直接決められた。3点目はこれまた広島の右サイドからロングスローで放り込まれたボールが後ろにそらされ、そこを詰められた。
フリーキックは正直仕方ないと思う。あの舞台で決め切る力が相手選手にあったのだ。相手が素晴らしかったという以外ない。しかし、ロングスローはそうではないはずだ。
試合後の選手のコメントを見るとロングスローが飛んでくることはわかっていたし対応できると考えたらしい。実際、前半の最初のほうにあったロングスローには対応できていた。しかし、途中から広島DFがGKの進路をブロックするようになったところから対応できず失点した。
臨機応変な対応ができなかった
GKへのブロックは最初から広島が用意していたものなのかはわからないが、GK小島亨介のコメントを見るとGKをブロックしろという声は聞こえていて、でもこちら(柏)は対応を変えることができなかったようだ(小島コメント)。
同じような形から2失点しているのだから、対応したくてもできなかったというのが本当のところだろう。試合後のMF小泉佳穂も「回答を自分たちで持ち合わせていなかった(小泉コメント)」というように、試合全体を通して広島をどうすれば攻略できるのか、どう対応すればよかったのかわからなかったということなのだろう。
チームとしてロングスロー対策が十分でなかったのならそれは準備不足としか言いようがない。
ロングスローへの批判
試合内容とはズレるが、広島が連発してきたロングスローが注目され始めたのは2024年の町田ゼルビアの影響だ。あの頃はロングスローへの風当たりが強く、さらにそれで勝ち点を積み上げる町田へのヘイトも高まっていた。
ただ、あんなに批判されていたロングスローも今ではプレミアリーグ(イングランド)でさえ戦術の一つとして取り入れるようになっており、時期が変われば、使うチームが違えばこんなにも受け取られ方が変わるものかと驚いている。
私も最初はロングスローを使う町田が好きではなかったが、今思えばロングスロー関係なしにただ町田が嫌いだったのだと認識を改めた。町田へのヘイトが高まっていたのは、無駄に時間を浪費したり、都合の良い時だけ被害者ぶる監督の振る舞いだったり、それでも試合では町田に勝てないという他の理由が原因だった。
広島のロングスローは批判を許さないくらい戦術として完成していた。
柏は失点してはいけなかった

今季柏レイソルを見てきた人はわかるだろうが、リカルド監督は90分間で勝つことを目的にしてゲームプランを組んでいる。それは圧倒的にボールを保持して相手を走らせ疲弊させ、相手の足が止まったところで仕留めるという戦い方だ。
だから柏レイソルは簡単にシュートを打たない。とにかくボールを握ってボールを回すからだ。そうしないと相手は走らず、体力を奪えない。むしろゲーム展開が早くなって柏に不利に働く。
となると柏レイソルとしては前半に得点を奪うことは期待できない。この試合も序盤に小屋松からのボールを受けた瀬川と前線にいた垣田でカウンターをうつことができる場面があった。最終的には瀬川のシュートが枠を外れて終わったが、今季の柏レイソルはここでシュートはうたずボール保持を選択する。
だから前半は0−0、これが柏レイソルにとっては一番良いのだ。
運もなかった
ロングスローから失点してしまった柏レイソルだが、私はそこまでショックは受けなった。たしかに失点しないにこしたことはないが、それでもレイソルは後半に絶対点を取れると信じていたし、8月の浦和戦、10月の川崎戦では2点差以上から逆転勝利も経験していた。だから1点差ならなんとかできると信じていた。
しかし、運もなかった。広島・東がスーパーゴールをフリーキックで決めた。
広島からすれば「あのゴールを運だけで片付けないでほしい」と思うだろうしその気持ちはわかるが、あの舞台で直接フリーキックが決まるのだから運が良かったという面もあるはずだ。ちょっとボールがずれれば、キックがミートしなければ得点にならなかったはずだ。
トドメの3点目
2点差、これひっくり返せるのか?
逆転を信じていた私も少し不安になった。そしてもう無理かもと思う3点目がまたもロングスローを起点に入った。
ハーフタイムまで2点差で進められていれば、ベンチや監督からの指示でロングスローへの対策ができたかもしれない。そんなふうにも思うのだが、現実はそうあまくはなかった。
遅かった柏レイソルの得点

後半になり柏レイソルは細谷と仲間を交代で投入した。直近のリーグ戦で得点に絡んでいる2人が出てきた。逆転への期待も膨らむ。
1点入れば空気は変わると思った。それは選手も監督も同じだった。
監督からは「良いパフォーマンスができているから続けていこう」というのと、「早い段階で1点を返せれば、まだまだどうなるか分からない」という話をされました。1点を返す時間をもっと早くできれば良かったと思います。
古賀太陽コメントより
なるべく早い時間に得点したかったはずだ。しかし細谷がゴールを決めたのは81分。遅すぎた。
あれが入っていれば
細谷の得点でいっきに雰囲気は変わった。いける、まだ点は入る、柏が強いのはここからだと思った。実際にチャンスは訪れた。84分に浮き玉を細谷がシュートした。あれが入っていたら結果は違ったものになっていたと断言できる。だが、シュートは枠を大きく外れた。
あの時に「今日は柏の日ではなかったんだな」と感じた。
そして試合終了のホイッスル。柏レイソルは準優勝となった。
我々のサッカーをしたというリカルド

試合後のリカルド・ロドリゲス監督のコメントを引用したい。
負けたことはもちろん悔しいですけれども、われわれはやるべきことをやり切ったと思います。われわれが今までやり続けてきたスタイルをしっかりと貫き通しました。広島さんの守備をはがすことはとても難しいです。それにもかかわらず、われわれはうまく彼らの守備をはがし、そして多くのチャンスを作れていたと思います。失点シーンに関しては、ロングスロー2つとFKからの失点というのがとても残念で仕方がないですけれども、決して下を向く必要はなく、自分たちのプレーに誇りを持って、今日のこの場から去りたいと思います。
引用:Jリーグ公式HP
「われわれが今までやり続けてきたスタイルをしっかりと貫き通しました」というのは本当にその通りで、アディショナルタイムに入り2点差を追う柏レイソルは、それでも無駄なシュートは打たず確実に得点できるチャンスを探してボールを回していた。
これが今季の柏の強さであり、ブレずに続けてきたことがリーグ戦の順位(2位)と決勝進出と結果に表れている。柏レイソルはスタイルを貫いて、その上で負けたのだ。
果たしてそれで良いのか
私は今のチームが大好きだし、選手も監督も全力で応援している。が、決勝というこの1発勝負しかない状況でシュートを打たずボールを繋ぎ続けたことは果たして正解だったのかという気持ちも正直ある。
こんなこと選手も監督もわかっているのは承知のうえだが負けたらそれで終わりの状況でシュートを打たなければ勝つことは絶対にできない。確実に決まる状況をつくるのは大切だが、そうは言っていられない状況なら少ない可能性にかけてでもシュートを打つべきだっただろと思ってしまう。
もちろんこれは結果論でチャンスを探しまくった結果得点につながっていたかもしれないし、シュートを打ったところで入らない、相手にボールを持たれて終わり、なんてこともあったわけだ。それでも煮え切らない思いが私にあるというだけの話なのだ。
レイソルは結果を求める手段として自分たちの積み上げてきたスタイルを貫くことにしただけだ。短期の結果ではなく長期の成果を選んだだけだ。これが正しかったかどうかは今後レイソルが証明する。
われわれが今までやり続けてきたスタイルをしっかりと貫き通しました。
試合後リカルド監督のコメント
今季残りの試合に向けて柏レイソルのできること

2025年のルヴァン杯というトーナメントは終わり、柏に残されたのはリーグ戦のみとなった。選手も監督もサポーターもタイトルを逃したという大きなダメージを受けている。しかし、監督は言う。
リカルド監督の言葉
顔をあげよう。顔を上げよう。
この経験から、さらに強くなろう。
今シーズン終わってないよ。
ACLに行けるかは俺ら次第。もちろんそれを目指す。
そして、それだけじゃ満足できないよ。
負けたからこそ、ACLに行くだけじゃ俺らは満足できない。
だからこそ、リーグタイトル目指してあと3試合3連勝。
もちろんルヴァンカップを撮りたかったけど、何も終わってない。
あと1ヶ月、あと3試合、でかいこと成し遂げられるよ。
だからこそ、顔を上げて。
悔しいよ、悔しいけども、何も終わってない。
良い試合やったよ。
チームとしてやるべきことをやった。
誰も最後まで諦めずにプレーし続けた。
足を止めずに最後まで戦った。
勝ち負けはある。今日は負けた。
けれども顔を上げて、あと1か月あと3試合、
クラブの歴史を塗り替えるために
あと3試合、3連勝を目指して、
でかい成功のために進み続けよう。
引用:クラブ公式X
聞いた直後の選手の拍手は正直力がない。しかし、ここから立ち上がらなければとこの言葉を聞いた全員が覚悟を決めたはずだ。
この敗戦を次につなげる
もう3連勝しかないと言う中で、私を含め多くのサポーターが心配で気にかけているのが最終節町田戦ではないか。先に触れた町田の強みであるロングスローを今回の広島のように叩き込まれるのではないかと思っただろう。もしかしたら次の名古屋戦、その次の新潟戦でも同様のプレーが増えるかもしれない。
ロングスロー(そしてセットプレイ)という弱みをこの短期間で克服できるかが鍵になる。
同じ轍を踏まないのが今季の柏レイソル
ただ、おそらくは心配ない。この弱点克服についてはリカルド監督が解決策を授けてくれるはずだ。それは今季連敗していないことが証明している。
柏は今季リーグ戦で5敗しているが、連敗をしていない。鹿島の個の力に敗れ、岡山のハイプレスに敗れ、町田のパワーに負けた。しかし、そこからチームは対策と修正を重ね、勝ち点を積み重ね、順位を上げてきた。
選手が「準備不足だった」「回答を持っていなかった」と敗戦の理由を口にするのは、逆を言えば「入念な準備をし」「回答を用意しておけば」勝つことができるということだと私は思う。それを今季のチームは結果で証明し続けている。
修正力こそリカルドレイソルの強みなのだ。
ここで終わりではない

繰り返しになるが2025年のルヴァン杯は終わった。でも柏レイソルは終わっていない。リーグ戦での優勝の可能性が残っているということもあるが、そもそもリカルドレイソルは今季始まった1年目のチームなのだ(広島はスキッべ体制4年目)。
昨年、一昨年と残留争いをしていたチームが1年経たずにカップ戦準優勝、リーグは首位と勝点差1の2位だ。シーズン序盤に誰も予想できなかったことをこのチームは成し遂げている。
準優勝は残念だったがこの舞台まで来れたことは素晴らしいことだし、リーグ戦でこそ優勝を見せてほしいと願っているし優勝できると信じている。そのときに選手や監督の後押しができるよう私は応援するのみだ。
最後に、柏レイソルルヴァンカップ準優勝、本当におめでとう。
